*鷽(ウソ):鳥の名
記録的な日照不足と集中豪雨で日本のいたるところで農作物に被害が出ていると聞く。氾濫した川が田畑に流れ込んだり、流れそのものが変わってしまったところもあるとか。中州は土砂が堆積して平らな島のようになっているところ。大水の影響を最も受けるところだが、長年のうちに灌木が生えたり流れ着いた倒木が根付いてちょっとした茂みを作ったりして。野鳥にとっては雛を育てるには好都合の場所かもしれない。
二日がかりで日本を縦断した低気圧の余波で今だに強い西風が吹いている。海のレジャーを楽しむ人にとっては飛んだお騒がせ低気圧だったろう。ところで、ヨットハーバーが提供する天気予報には実況、24時間後、48時間後の気圧配置とともに風向きはむろんのこと、潮汐、波シミュレーター、沖合の波、海水温、潮流など海に関する情報が豊富。申し込めばヨットに試乗体験もさせてもらえる。好奇心旺盛な子供たちを乗せて波穏やかな辺りを帆走してくれるのを手庇の中で見守る。
*手庇:てびさし、帰帆:きはん、海紅豆:かいこうず
透明に近いような細い翅(はね)で脚もか細く弱弱しい飛び方をするウスバカゲロウ、その幼虫がアリジゴク。体長約一センチで灰褐色の体に棘(とげ)と大きな顎を持つ。雨の当たらない縁の下などの砂地にすり鉢状の穴を作りその底に潜んで獲物を待ち、落ちてきた昆虫類をとらえて体液を吸収するという。そのすり鉢状の穴を抜け出せない地獄にたとえたのが語源だが、地上に出してみるとあとずさりばかり。名前ほど強気の虫ではないのかも。
つい先だってまでは水辺が眩しく照り返していたのに、いつの間にか川の流れさえ見えないほど蘆(あし)が生い茂っている。蘆だけではない、土手一面、足を踏み入れるのがためらわれるほどの雑草。昭和天皇が雑草という名の草はないとおっしゃったが、確かに目を引くような花をつける草草も。「あれは何?」という声の方へ目を向けるとヌートリア。いるはずのない動物が水の中から顔を出している。飼われていたのが逃げ出したか、飼えなくなって放たれたか、水辺の生き物の世界も騒がしい。 *行々子:ぎょうぎょうし
茶道では座を清める意味で席入り前や中立の後、また、炉の茶事では初炭の後に座箒(ざぼうき)で座掃きを行います。その時の箒が白鳥や鶴、鴻の羽。白鳥ならば右羽、鶴は片羽、鴻ならば双羽を使用し、手元は竹の皮で包まれています。作法通りにスマートに掃くというのはなかなか難しくて修練のいるところ。現在は天然記念物の鳥なので新しい羽を用いた羽箒(はぼうき)などはあまりなく古いものを大切に保管して使っているのが現状。貴重な羽で作られる羽箒、次の代へ引き継げるよう大切に扱いたいものです。
一般的に勾配のある地面の耕作の場合、ある程度平らにならし段差をつけて田畑に作るのが一般的。ゆえに、能登の千枚田や祖谷の段々畑など一枚一枚が狭い斜面の田畑での作業は今でも手仕事に頼るしかない。かたや、広大な北海道では平らにさえすれば田畑を上へ上へと積み上げる必要もない。水はけのよい土地に育つ作物にとっては起伏をそのまま活かした栽培法の方が適しているともいえる。大型の農業機械が車体を傾けながら豆を蒔き、苗を植え、麦を刈り取っていく。「北海道はでっかいどう」というコマーシャルがあったが、何事もスケールが大きい。
暗闇の中から篝火を先立てて下ってくる鵜飼は文句なく見ごたえがあるが、どちらかといえば昼間の方が出やすい者にとっては昼の鵜飼というのもありがたい。明るいところで鵜飼の説明をしてくれ鵜の働きぶりを見せてくれる。ちょっとしたカルチャー教室のような趣であるが、それでも川下りをしながら弁当を頂き、太陽光の下で鵜が鮎を追いかけたり、引き上げた鵜から鮎を吐かせる様子を見られるのはそれなりに面白い。手縄に引っ張られるように後ろからついて行っているのは今年デビューの鵜だそうでまだまだ修行中ということだった。
ウラボシ科のシダ植物の根や茎を束ねて井桁や舟形に仕立てたもので、軒下やや出窓に吊るし、その緑葉の涼しさを楽しむ釣忍(つりしのぶ)。夕立や打ち水のあとなど水滴が滴るのを見るのも涼しげで風情がある。最近は吊るすだけでなく置いて鑑賞する苔玉も人気。こちらは、根や茎を丸く束ねて周りに苔を巻き付け球の形にしガラスや染付などの皿にのせて楽しむもの。住宅事情が変わっては夏の凉の取り方も変わらざるをえない。
義父が80代半ばだったか、夫たち兄弟が昔住んでいたところについて尋ねたことがあった。大まかにこんな所だったよという答が返ってくると思っていたところ、それなら描いてみるからと方眼紙に間取りを描いてくれた。義父自身生まれ育った所とは言え、居間や客間などはもとより納戸や土蔵、井戸の位置まで描きこまれていて、その記憶力と精密さには恐れ入った。嫁の私でさえ見入ってしまったのだから、その家で生まれ育った夫達にとってその図は貴重な義父の形見である。
スーパーの野菜売り場に並ぶ野菜の品ぞろえがかわって徐々に夏らしく。
*靡く:なびく
「地虫穴を出づ」という季語で、土の中で冬眠していた虫が穴から出てくること。地虫とはカナブンなどのコガネムシ科の幼虫をさすのだが、この季語の場合は他の昆虫や土の中に眠るすべての生物が含まれるとある。冬の寒さから解放された生きもののよろこびが季語の本意のようだ。しかし、長らく暗闇の中にいた虫たちにとってはさすがに春の光は眩しいにちがいない。